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金持ちがプライベートバンキングの成長市場を担っているのだが、この分野の成長は向こう5年聞は少なくとも年率10%〜20%に達すると予想されている。
95〜97年も10%以上の伸びと推量されるので、金持ちの数は今では300万人を大きく超えているのではないか。
プライスウォーターハウス会計事務所の調査(1994〜95年)でも、ブライベートバンカーズの70%は、彼らの収益は向こう数年間、年率10%以上で伸びる、と予測している。
控え目の予測でも5%〜10%、強気の予測では20%〜30%になる、という。
富裕層とその資産の増加というのは経済の成長や証券市場の発展と密接に関係しているから、予測がそのまま実現するかどうかは分らない。
注目されるアジアの富裕層富裕層の増加は、地理的にも拡がりを見せている。
1950年代、つづく1960年代の「ゴールデンエージ」の“遺産”の上に、企業家の“富の創造”がいまなお続き、1990年代にいたって伝統的な資産の運用管理サービスに対する需要は、欧州、1、アメリカ、中東において急速に高まっている。
一方、経済成長の観点からみて、ラテンアメリカやアジアにおいても“富の創造と蓄積”は予想以上のスピードで進行している。
チエース・マンハッタン銀行の調査(1994〜95年)によれば、世界の億万長者260万人の個人金融資産9兆6000億ドル(約1200兆円〜これもいまでは5割は増えていよう)の約80%はオンショア(圏内)で運用されている。
このうち、最大のシェアを占める3兆5000億ドルはアメリカの富裕層の資産であり米国内で管理運用されている。
一方、オフショア(圏外)で運用されている部分は2兆1000億ドルと推測されているが、約半分はスイスやルクセンプルグ、ロンドン、あるいはイギリス領チャネルアイランド等のタックスへイプン(税金回避国、地域)など伝統的な欧州のブライベートバンキング・センターを通して運用されている。
一方、約3分の1がアジアの富裕層の資金である。
アジアにおける経済成長と「財」の成長により、同地域の金融センターが脚光を浴びるようになってきた。
その1つがシンガポールであり、1997年ライバルの香港が中国に返還されたので、今後“アジアのスイス”としてプライベートバンキングでも欧米のライバルになるとみられている。
シンガポールの大手商業銀行UOBのスイス子会社は、プライベートバンクではすでに大きな地歩を築いている。
伝統的プライベートバンキングの没落伝統的なプライベートバンクのほとんどはファミリーで所有、あるいは同族経営であり、高度な個人的財務サービスを提供しているが、近代経営からは取り残されている部分もある。
その1つが、資産運用面での不透明な運用方法と貧弱なパフォーマンスであるといわれ、国際的な競争相手から批判され、変革を強いられている。
特に、アングロサクソンの資産運用会社の批判は手厳しい。
資産運用で“不明朗な”運用というのはどこでもよくあることだが、過去には手数料稼ぎの過度の売買や、ひどい裁量行使などがあったプライベートバンクがポートフォリオの運用成績を測定する場合、往々にして不適当な指標を選択しているとか、運用報告がいい加減なために、顧客が貧弱なパフォーマンスに気がつかなかった、という笑えないようなケースもあった、とあるロンドンのプライベートバンカーは言っている。
あるスイスのプライベートバンクのOBがひとり言のように言っていたが、表には滅多に出ることはないが、実際、ひどい運用もあるのだ。
顧客のほうも運用に無関心で、自分の資産の運用成績が良いのか、悪いのか分っていない」こともある。
顧客は誰でも優れた運用を求めているものだ。
だから、ある日突然貧弱な運用成績に気づくと、怒って銀行を去ってしまうことになる。
不適切な運用をしていると、結果的に利益の出ている少数の顧客が他の多数の顧客の損を埋め合せている、という状態になる。
これは、どんな国でも共通している。
「20%の顧客が利益の80%を生み出す」とは、プライベートバンクや日本の投資顧問会社でもよく言われる経験則である。
伝統的プライベートバンクは、巨大な商業銀行や大手証券会社による新規参入の競争にさらされている。
プライベートバンキングのビジネスは比較的小資本で始められ、ハイ・リターン(高収益)が期待できる魅力があるからだ。
それに、商業銀行は大勢の優秀な人材と情報システムなど、すぐに転用できる体制を持っている。
参入の最も顕著な分野は、資産運用である。
この動きによって、顧客の側でもプライベートバンクに期待するものが従来の「個人的なサービス」から資産の「運用成績」に移りつつある。
現在ではほとんどのプライベートバンクは、手数料や諸費用のリストを公表している。
競争上これらは簡単に値上げするわけにはいかない。
むしろ引き下げを迫られている。
多くのプライベートバンクは、一方で運用システムなど資本投資に追われ、収益性というプレッシャーに直面している。
そのため経営を見直し、それなりに顧客の各セグメントごとに提供するサービスを合理化してきた。
例えば、最も利益の得られる大口顧客層の「個人別ポートフォリオ管理」とか、あまり儲からない中レベル顧客層の「ファンドの合同運用」や、その他大勢の「投信運用」などである。
銀行にとって本当の収益をもたらしてくれるのはー握りの大口顧客であるということを銀行はよく知っている。
金融機関にとって顧客のセグメント分析は大事である。
特にプライベートバンクでは見込客の段階から富裕層のセグメント分類と顧客情報の蓄積は重要で、これがないと顧客に合った資産の運用が不適切になってしまう。
顧客の分類は通常「預かり資産」の大きさによるが、大口の資産の運用は銀行に大きな収益をもたらす。
顧客のポートフォリオのサイズと収益性の聞には強い相関関係がある。
地理的なセグメントも重要だ。
中南米の顧客とアジアの顧客は人生の考え方、資産の性格も、運用の仕方も月と太陽ほど異なる。
イギリスなどでは一定の「職業」に顧客対象をしぼっているケースもある。
地主、弁護士、医者、企業主などさまざまだ。
例えばスイスにあるチエースマンハッタン・プライベートバンクでは、彼らが得意とする大金持の企業家に的をしぼっている。
また、アメリカの金融機関は顧客情報のデータ集積には常に意を用いているが、プライベートバンキング・サービスを投資目的にそって分類し、顧客を「財産を増やすタイプ」財産を守るタイプ」に分けているところもある。
プライベートバンクは、新しい顧客を獲得する努力をする一方で、既存客の資産の預かりを増やすことに力を注いでいる。
プライベートバンキングの世界では、“良い顧客をつかむ”という重要性はいつでも、どこでも“真理”である。
ロンドンのロイズ・プライベートバンキングでは、7万5000ポンド(約1500万円)以上の預かり資産を持つ顧客に対しては通常の銀行取引の他に、特別の「資産管理サービス」も提供するようにして差別化を図っている。
顧客分類を機械的に行うと、プライベートバンキングの基本である“手づくりの個人的サービス”という大切さを見落とす危険がある。
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